h-4) (HTGR) 大洗でも、メルトダウン
させようとして、しなかった
2024年4月
本ページの内容は、上の黒いメニュー
(項目は基本的にアルファベット順)に
あるページ e-5) とかなり重なります。
つまり、
ある実験で新型原子炉の冷却系を故意に
停止させ、意図的に炉心のメルトダウン
を引き起こそうとした ⇒ メルトダウン
せず、原子炉は勝手に停止した
という現実の実験結果です。
そこから、「大事故が、原発の最大の
問題」というのが間違いである、
と説明します。
誤解しないでほしいのですけど、私は何も
・ 実験でメルトダウンしなかったから、
その新型炉を実用化してもメルトダウン
はしない、
などと主張したいんじゃありませんし、
・ 原発事故を軽視しているのでも、
ありません。
原発事故も大問題なのですが、核発電には
a) 全く未解決(少なくても、2024年4月
の時点)の問題である核ゴミの処分
もあるし、
原発事故以上に恐るべき問題として
b) 核兵器のproliferation risks という深刻
な危険性がある、
と私は言いたいわけです。
上記の b) が最大の問題であることは、
やはり上の黒いメニューの終わり近くに
あるページ 付録 w-4) で紹介している
とおり、Al Gore 元アメリカ副大統領も
ご指摘です。
この「最悪の問題」は、核発電の歴史の
中で「誕生の事情」から不可分に絡んで
いたものですよね。(Manhattan Project,
Chicago Pile, etc. ページ b-1) 参照)
ところが、これまでの日本の反原発運動
のかなりの部分は、原発と核兵器とを
切り離そうとする核推進勢力のプロパ
ガンダにまんまと騙されてしまい、この
2つを切り離していました。
そして福島第一の大事故があると、
それをきっかけに反原発運動が盛り
上がったが、「事故」にフォーカスした
ものだった ⇒ 10年以上が経過し、
大事故の「ほとぼり」が冷めると、
反原発運動も予想通り衰退してしまった
というわけで、もっとも恐るべき問題
proliferation risksは、今もあまり日本では
取り上げられておりません。
「じゃあ、メルトダウンしない原子炉を
作れば ・・・」
で、「やかんをのせたら~~」はあく
までそのproliferation risksにフォーカス
したサイトなのですが、本ページでは
先日の「メルトダウンできなかった新型
原子炉の実験」を紹介したいので、
あえてフォーカスから離れます。
* なお、HTGRのproliferation risksに
ついては、既にページ h-3) で
“’Advanced’ Isn’t Always Better”
(Edwin Lyman, March 2021)
からの抜粋・日本語化を紹介済みです。
人間の性として、
何か大事故が発生 ⇒ 社会規模の大問題
になる ⇒ 「ほとぼり」が冷めると、
沈静化
というパターンは必ず繰り返すでしょう。
でも、だからこそ、この「人間の性」に
どう対抗していくのか、私たち反核勢力は
考えるべきだったんじゃ? (ページ e-8)
や e-9) など参照)
それと、核発電推進勢力は、「福島第一
でメルトダウンが起きて、社会は大騒ぎ
になりました。でも、”メルトダウン
できない”原子炉も、開発中なんです。
それなら、安全でしょ?」という主張を
してくるのも、目に見えてますよね。
そんな「メルトダウンできない原子炉」の
1つが、ページ e-5) で紹介したアメリカ
の EBR-II でした。
そしてこの3月、日本の茨城県の大洗
でも、メルトダウンできない新型炉の
実験が行われたのです。原子炉のフル
稼働中に故意に冷却系を停止させて
メルトダウンを引きこそうとしたのだ
けど、原子炉は「勝手に」停止し、
無事故だったという実験結果でした。
原子炉のタイプはEBR-IIのような高速炉
ではなく、HTTRという炉でした。要は
ページ h-0) から h-3) で紹介したHTGR
なのですが、大洗のものは実験・テスト
用なので、HTTRと呼んでいるようです。
まずは、その実験の概要を
主催者である日本原子力研究開発機構
(JAEA)からの今年3月28日付の
リリースで、お読みくださいな。日本語
ですから、ご自分で必ずお読みください
ね:
HTTR(高温工学試験研究炉)における安全性実証試験に成功 ―高温ガス炉固有の安全性を確認―|日本原子力研究開発機構:プレス発表 (jaea.go.jp)
なお、このリリース中にある「ぺブル
ベッド型」については、上の黒い
メニューのページ p-0) から p-3) で
論じております。
「だから、メルトダウンしない
原発もできたし、原発をたくさん
作ろうぜ」・・・
・・・とか言い出す推進勢力も、近日中
に登場することでしょう。
しかし。
私には少なくても2点、今回の事件との
関連で良く分からぬ問題がありました。
・ 炉心が「勝手に停止」したこと自体は、
炉内温度に対する核反応が負のフィード
バック、つまり温度が高くなるほど
核分裂が静まっていくという仕組みに
なっているので、理解できます。
? でも、炉内の熱をどうにかして放出
しないといけないはずで、それは
どこに・どうやって放出??
これはJAEAさんが説明すべき問題です
ので、JAEAのリリースなどを探し
ました。
結果、
カーボンニュートラルに貢献する高温ガス炉の開発(2022.03.31掲載) | 特集 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 高速炉・新型炉に関する研究開発 (jaea.go.jp)
に答えがあったようです。
このリンク先のページを少しスクロール
ダウンして、「HTTRを用いた試験計画」
というタイトルの下にある概略図を
ご覧くださいませ。
つまり、炉容器は巨大な水プールの中に
収められていて、
その水の自然対流、さらに輻射熱で
高温になった水を、プール外部の
熱交換器で大気中に放散する
ってことでした。
なお、「通常運転」では冷却材として
Heガスを使うのですが、そのHeガスの
熱も別の熱交換機により大気中に放散
することが、この図から分かります
よね。
ということは、原発周囲の空気は
温暖化するはず
それは、明らかですよね?で、JAEA
さんは「カーボンニュートラルに貢献」
とおっしゃってますが、
CO2さえ出さなけりゃ、原発周囲の大気
を温めても問題はないわけ???
という疑問が、当然発生しますよね。
それと、大地震やテロ攻撃などでプール
の水が漏れた、熱交換器が破壊された、
そんな場合は??
まあ、このプールはかなり頑丈な作りに
するのでしょうね。そして、「自然対流」
と言っているので、熱を運び出す水も
passive safety (オペレーターの介入や
電動ポンプなどがいらない)というわけ
でしょう。なので、aurora 効果も無関係
だとしておきましょう。(ページ g-5)
の末尾参照)
でも、その水はパイプを経由して
熱交換器に行く、と図からは読めます。
なら、地震とかテロ行為のためにその
パイプが切断され、熱交換器に温水が
いかなくなったら??
まあ、切断個所から温水が漏れ出し、
しばらくは原子炉は冷えるでしょう。
でも、そのうち水がなくなってしまい
ますよね。そしたら、どうやって
原子炉を冷却するのでしょうか??
JAEAさんからの説明が欲しい
ところですよね。
で、やっぱり私たち反核勢力が注意
すべき点として
確かに原発事故も怖いのですけど、
核兵器の拡散(proliferation)はもっと
コワい!
なのに「メルトダウン」ばかりを
問題にして運動を進めてっしまうと、
当然のように上述のHTTRやページ
e-5) で紹介したEBR-II のような新型
原子炉を、核発電業界は登場させるで
しょう。メルトダウンの大事故さえなく
なれば、核発電が巨大に拡張しても良い
のでしょうか??
特に2011年以降の反核運動のあり方
では、こうした弱点を克服できないと
私は見ていましたし、2024年4月現在、
現実に弱点が露見しています。
核発電の出生時からの本質である
proliferationをフォーカスに据えた、
「事故がなくても継続していく」新たな
反核運動を始める時期になっている
ように、私には思えるのです。
なお、それとの関連で、
アメリカのワシントンDC近郊に本拠を
置くBeyond Nuclearというnon-profit団体
では、核発電と核兵器両方の廃絶を呼び
かけてらっしゃいます。アメリカという
いまだに核兵器の必要性を信じる人が
多い社会の中で、よく的を得た活動を
してらっしゃると思います。
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